思った通り、翌朝園子の両親がアパートにやってきた。
怒りと言うより物凄く疲れた悲しそうな表情をしていた。
きっと昨晩あまり眠れなかったのだろう。
時既に遅しで園子はJhonと逃亡済み。携帯にかけても勿論出ない。
だいぶ警戒しているので非通知は勿論、公衆電話や見慣れない番号なら絶対取らないはずだ。
私がもし園子でもそうするだろう。
園子の親は私がかけたら出てくれるかもしれないとすがってきたが、
私はそういう協力の仕方はしたくなかったので断った。

この騒ぎを聞きつけ、うちのアパートの管理人がやってきた。
だが、状況が全く把握できないため洗いざらい話さなければならなかった。
女性専用で男性入室禁止を一応謳い文句にしているアパートなので、
Jhonと住んでいたという事実に管理人は激怒し、園子捜索の味方には全く使い物にならなかった。
管理人は完全なる大阪のおばちゃんタイプで人の話を聞かないしとんちんかんなことばかり何度も言うので
この一刻を争う緊急事態時に話しているには時間の無駄以外のなんでもなかった。
園子の親もそこまでバカではない。
さっさと見切りをつけて園子捜索に精を出していた。

仕事を持っている園子の両親は、毎晩片道3時間かけて自宅と園子のアパートとの往復をした。
その努力は見ていて涙ぐましくなるほどで、両親の必死の思いが痛かった。
そしてそれは次第にここまで親不孝な園子への軽蔑へと変わっていった。

私は園子の今の居場所は本当に分からなかった。
出て行くということだけは聞かされたけど、逃亡前夜は話してない。
だけど大学に行っていなかった園子は他に友達なんて皆無だったし、情報源は本当に私しかなかった。
私は園子が旅行会社に行くのに暇な時は付きあってあげたりしたし、
GETした航空券を園子は満足気に私に見せてきたので搭乗日(日本脱出のXデー)だけは知っていた。
その時、私は最後の切り札だけは確保しているというような不思議な安心感を感じた。
この最終手段を使う日が来るのかどうかはこの時、まだ私にも分からなかった。

Xデーまではまだ1週間くらいあった。
園子の逃亡劇が幕を開けて5日目くらい。
園子の両親はついに警察に捜索願のようなものを提出したらしい。
だけど警察は恋愛が絡むことにはほとんど手を出さない。
管理人と同じくらい役立たずだ。
Xデーは知らないがその日が迫っていることだけは察知できる様子の両親。
捜査は初めから充分必死だったが、ますます必死になってきた。
まるで時効を迎える犯罪者逮捕みたいだった。
犯罪は犯してないけれど、これだけ両親を裏切って心配させ、探させることは立派な犯罪のように思えた。
だとしたら私が園子のことを知っているのに言わないのは共犯という罪になるのではないか。
私は揺れていた。
どのみちどちらかを裏切ることになる。園子を裏切るか園子の両親を裏切るか。
次回ついにこの話に幕を下ろすことにしよう。。。

(つづく)

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